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スマートグリッドとは?次世代送電網と呼ばれる画期的な電力システム

近年、電力業界で「スマートグリッド」と呼ばれる技術が大変注目されています。

スマートグリッドとは、「スマートメーター」と呼ばれる特殊な電力量計を活用して電力供給を一括制御するシステムのことです。脆弱な電力系統のせいで大停電が頻発してきたアメリカ発のコンセプトで、オバマ大統領のグリーン・ニューディール政策の一環として打ち出されたことで世界的に関心を集めることになりました。

コンピュータにより一元管理することで無駄な人件費を省き、低コストかつ安全に電力を供給することを目的としています。日本語に直訳すると「賢い電力網」となるように、日本でもスマートグリッドは「次世代送電網」のテクノロジーとして期待が寄せられています。

従来の電力供給は、発電所から各世帯へ電気を送るだけで極めて一方向的でした。しかし、スマートメーターを使えば、太陽光発電などにより得た家庭内の電力を直接電力会社に送ることが可能となり、理想的な双方向性が実現します。

しかもスマートメーターにはITの技術が導入されており、屋外にいるときでも自宅の電力消費量をパソコンやスマートフォン等の端末からチェックすることができます。家庭に備え付けられている一般的な電気メーターでは概算の消費量しか分かりませんが、スマートメーターならどの機器が電気を多く消耗しているか等の情報までしっかり把握することが可能であり、節電に重宝します。

電力会社にとっても同様。広範囲にわたって電気の需給バランスをリアルタイムで確認できるため、電力ピークの時間帯に供給度合いを調節し、停電のリスクを回避できるメリットがあります。温室効果ガス削減効果も期待でき、事業者にとっても消費者にとっても有意義なシステムと言えます。

ただし、スマートグリッドは開発されはじめてまだ間もない技術なので、いくつかの欠点も指摘されています。

その一つが、セキュリティの問題です。スマートメーターに組み込まれている通信技術はスマートグリッドの最重要部であり、万一ハッキング攻撃を受けてコンピュータウィルスに感染してしまったら取り返しのつかないことになりかねません。大企業のコンピュータですら脆弱性を突かれてハッキングされる時代ですから、スマートグリッドに実装される通信システムにはより強力なセキュリティが求められます。

もう一つの課題は、自由度の問題です。地域の電力供給を電力会社側に制御されれば、必要なときに電気が使えないといった本末転倒な事態が起こるかもしれません。スマートメーターの設置にかかる負担も軽視できませんし、スマートグリッドの導入により本当にコストダウンを図れるかどうかも不明です。

日本では、2009年に設置された次世代送配電ネットワーク研究会がスマートグリッドの技術を研究しています。はたしてスマートグリッドは世界の電力業界をどのように変えていくのか、今後の検証結果に期待しましょう。