太陽光発電の売電ができない?大手電力会社が電力買取の新規受け入れを中断

順調に進行していたはずの太陽光発電の買取制度だが…

2011年3月に発生した東日本大震災の影響で、国民の脱原発意識は急激に高まりました。

政府は代替エネルギーの普及を推進するため、2012年の7月から「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」を導入しました。太陽光発電風力発電の設備で生み出した電力を最大20年間に渡って電力会社に一定の価格で買い取ってもらえるとあって、個人・法人問わず多くの申込が殺到。特に、導入手続きの簡単な太陽光発電システムの普及率を大幅に押し上げる好結果をもたらしました。

ところが近年になって、順調に進行していたはずの太陽光発電の買取制度が不穏な様相を呈してきました。

2014年の夏場から、九州電力が管内全域で再生可能エネルギー買取の新規受け入れを中断。さらに、北海道電力、東北電力、四国電力、沖縄電力も続々と電力買取の受付を中断する方針を掲げ、日本国内の大手電力会社5社が揃って太陽光発電エネルギーの買取を停止する異常事態に発展しています。

なぜこのような事態になってしまったのか

このような状況に陥ってしまったのは、想定以上の太陽光発電システムの普及に電力会社の設備が対応しきれなくなってしまったことに原因があります。

太陽光発電は気候の変動を受けやすく、晴天が続く季節には発電量が大幅に高まることがめずらしくありません。それは本来喜ばしいことなのですが、管内の電気需要量を上回るほどの電力が一気に送電網に流れ込むと、需給バランスが崩壊して電圧や周波数が大きく乱れる可能性があります。その結果、精密機器の生産に支障をもたらしたり、送電設備が故障して停電を引き起こしたりするリスクが高まってしまいます。

不測の事態を未然に防ぐためにも、電力会社は太陽光発電の受け入れを中断せざるを得なくなってしまったのです。

続々と上がる不満の声

この決定に対し、太陽光発電システム導入予定者から続々と不満の声が上がっています。高額な太陽光発電設備の導入コストを売電収入で補うつもりだった方にとって、電力買取の新規受け入れ中断は大問題。エコ住宅のローン返済にも影響が出るため、「詐欺ではないか」と罵る方が少なくありません。広大な農地にメガソーラーを立てる事業計画がご破算になる恐れもあり、企業の間にも混乱が広がっています。

事実上、電力買取制度の崩壊と言っても過言ではない危機的状況を重く見た経済産業省は、審議会で再生可能エネルギー固定価格買取制度の見直しを検討する方向で調整に入っています。

なお、各電力会社の太陽光発電の買取中断は、発電容量10kW以上の産業用太陽光発電を対象としており、10kW未満の住宅用太陽光発電の買取は原則継続される見通しです。とはいえ、由々しき問題であることに変わりはありません。将来的に太陽光発電システムの導入を検討している方は、予期せぬ計画変更の可能性があることも十分に視野に入れておいた方が良いでしょう。

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